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『炎立つ』
  高橋克彦著 講談社文庫

 著者の作品では、「写楽殺人事件」を読んだことがある。このときは、SFの書き手の延長線上にある作品と感じた。
 この『炎立つ』は、たまに時代小説も読んでみたくなり、NHK大河ドラマの原作であることは知っていたので手にしたものだが、読み始めてすぐに、異次元にの世界に入り込んでしまった。SF的要素はなかった。全5巻、あっという間に読み終えた。「臥牛蝦夷」と自らを名乗るようになったのも、この作品に触れたことがきっかけとなっている。

 物語は、今の東北地方、陸奥の豪族、安倍頼良(よりよし)の館で、息子貞任(さだとう)の婚儀がおこなわれているところから始まり、奥州藤原氏の祖、清衡がその地位を築くまでを、当時、朝廷側から蝦夷(えみし)と悔られ、日本史では「まつろわぬもの」=「反乱者」として扱われてきた人々の側から描いている。歴史上の出来事としては、前9年の役や後3年の役を扱っている。
 今の時代、地方に住んでいると、どうしても東京中心の中央集権的な部分というのが日々の生活で目に付いてしまうことや、他者の言うことに素直に従いたくないという、へそ曲がりな性格もあって、中央への対抗という視点は常に自分の中にある。こうした自分の思いがあるので、この物語に登場する人々(安倍頼良・貞任父子、藤原経清・清衡父子など)が、自らの地を中央に隷属することなく慈しんでゆきたいと願い、独立性の確保を求める姿には、深く感情移入してしまった。
 歴史は、単なる連合体としての蝦夷(当時の奥州人達は、自らを何と称したかは分からない。)が、中央集権という国家体制ができあがっている朝廷側の圧倒的数の力の前に屈し、この物語の結末で奥州の雄となった藤原氏も、独立性を維持できなかったことを伝えている。
 敗者側の歴史であるだけに、文献も少ないと思われるが、著者の、東北人としての誇りを語りたいという思いが、ひしひしと伝わり、全5巻を興奮しながら読み終えた。地元びいきもあるのだろうが、凄い本である。

| 異次元への旅 | 10:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
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